【SS】僕と彼女の「世界」

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【SS】僕と彼女の「世界」

『優しい世界なんて、あるわけない』

 いつも、彼女はそう言って、世界に絶望していた。

 流れるような黒髪に、華奢な肩と、肢体から伸びるすらりとした手足。人形みたいに整った彼女の顔立ちは、誰もが目を奪われた。

 ただ、彼女が瞳に映しているのは虚空ばかりで。
 僕は、それがいつも気がかりだった。

 誰も信じられない。信じられるものがないから、寒くて。
 だから、生きていくだけでも、息苦しい。
 それが僕と彼女の唯一の接点だった。 

 ……あの時までは。

*

 人間の「負の感情」。どうしてこんなものがあるのだろう。

 こんなものさえなければ、こんなに苦しい思いをしなくてすむのに。
『あの人』みたいに壊れてしまえば、こんな砂を噛み締めるような、地を這うような重い思いを抱えずにすんだのに。

 叫ぶたびに、もう1人の自分が吐き捨てるんだ。
「お前は、つくづく人間に向いていないクソだ」って。本当に、うるさい。だれがクソだ。

 でも、僕は人間をやめなかった。いや、やめられなかった。
 死ぬ勇気もないし、そもそも苦しいのが苦手だから、自殺なんて、絶対にできないし。

「本当に、意気地のない馬鹿だな、テメーは」
 うるさい、黙ってろ。

「消えちまえ、そしたら俺の自由だ」
 お前が出ると、いろいろめちゃくちゃになるから嫌だ!

「チッ、妙なところで頑固だからムカつくんだよ、お前は」
 うるさい、うるさい! ひっこんでろ!

 あの時の僕は、「葛藤」って言葉が大嫌いだった。

 だから、彼女とも「同類」でいられたんだ。

*

 月日は流れて、流れて、流れて。

 やっぱり何だかんだで、僕は世界に生かされ続けた。雨が降り、地面がかたまり、日が降り注ぎ、気がついたら種から芽がめぶいて、草木が生え、生い茂るみたいに、いつの間にか僕の世界は広がっていた。

 その様を、もう1人の僕は、舌を出して「ゴキブリ並の生命力すぎてキモい」と皮肉った。ちっとも笑えない。

 ただの夢が、夜に見る夢が、僕を、僕たちを引き止めていただけで。僕は、生きるつもりなんてひとつもなくて。

 それなのに、世界は、僕に、僕たちに「生きろ」という。僕の胸の鼓動が止まらないのは、きっとそういう意味があるんだ。

 多分、きっと、そう。

*

 ある時、僕の「先生」は、しわくちゃの顔で少年のように目を細めて言った。

『常識ってのはね、疑うためにあるんだよ』

 その言葉が、脳裏にこびり付いて離れなくなった。どうしても忘れられなくなって。じゃあ、僕の信じているものは本当なのか? 嘘なのか? わからなくなった。

『優しい世界』は、もしかすると、どこかにはあるのかもしれない。ないかもしれないし、あるかもしれない。

「今」の僕には、雲をつかむような話だけれど。

 でも、それに気づいてから、もっともっと僕の見える『世界』は、変わっていった。

*

 時間の流れは「残酷」だ。何もしなくても、『何か』が「変化」してしまう。僕と彼女のあいだには、いつの間にか深い溝ができていて。

 だから「なんて、残酷なんだろう」と思ってしまう。

「なぁんだ。……あなたなら、分かってくれると思ったのに」

 落胆したような、彼女の声。笑っていた顔は、だんだんと色がなくなって。

 ――反射的に、しまった、と思った。

 でも、もう遅いのだ。時間が作り上げた大きな溝は埋まらない。どんなことをしても。時間は、戻ってこない。

 桜が咲いて、気がついたらすぐに散ってしまうみたいに。風が、はらはらと、花びらをさらっていく。ちりぢりになって、消えてしまう。

「優しい世界なんて、あるわけない」

 ――だから、私はこの世界を壊したい。

 綺麗な顔で、悪びれもなく、彼女はそんな恨み言を口にした。

*

「鬼に落ちてしまった人間を、元に戻すことはできないだろ」と、もう1人の僕は、言うけれど。『もしも』の結末を期待してしまう僕もいて。

 やっぱり何だかんだで、僕は世界に生かされ続けている。
 

あとがき

今ちょっと考えているお話の、走り書きみたいなもの。

この前書いた(多分、4か月くらい前)、SSにも出てくるキャラクターを流用しています(というか、「GAME OVERの世界」の方が『流用』してる感が強いぞ)。

【SS】GAME OVERの世界
寝起きに夢見が悪かったのか、3歳児の息子が寝ている横で、ちゃかちゃかちゃっとスマホで書き上げたSS(ショートショートストーリー)。約2000文字の「ゲームオーバー」の世界です。とはいえ、「魔法使い」がただ夢をみているだけなのですが。「あとがき」もあります。

ナノさんの『Nevereverland』を聴いたら、ズビビときて、なんだかダークサイドに落ちた少女が登場人物として出てきたりで。いっぱいたくさん妄想はしてるんですが、まあ、少しずつ形にできたらいいなと。

そんな春先の昼下がりでした。

 

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