Albireo-アルビレオ-【二次創作小説】『ノーザン・クロス スクールダイアリー』プロローグ -「ゆきひ」と「ちの」のケース-


Albireo-アルビレオ-【二次創作小説】『ノーザン・クロス スクールダイアリー』

プロローグ -「ゆきひ」と「ちの」のケース-

原作:Albireo project
著:しののめ とも

 秋も深まり、紅葉が散りかけて、寒さの足音が聞こえ始めてきた昼下がり。
 いつもの、見慣れた二人の部屋。二人分のベットと勉強机が備え付けられた、こざっぱりした部屋で。
 意を決したように、彼女が、本を読みふける、もう一人の彼女に言った。
「ねえ、ちの。私、ちょっと挑戦したいことがあるんだけど」
「……突然なあに、ゆきひ」
 どちらの彼女も、年頃のわりには小柄で、真っ白な雪を連想させるような長い髪と、淡く白く透けるような白薄桃の肌をしていた。
「私ね、将来、絶対に歌手になりたいと思ってるの」
「うん、知ってるよ。小さいころからの夢だったもんね」
 二人の会話の切り出しは、いつものように淡々としている。だが。
「――だから、やっぱり私、あの学校に行きたいと思っているの」
 ゆきひの、いつもと違う射るような真剣な眼差しが、『いつもとは違う』ということを如実にしていて。
 思わず、つい、ちのは眉をひそめてしまった。
「……『ノーザン・クロス』のこと? 通いながら高校の卒業資格も取れるっていう全寮制の、寄宿舎がある芸術系の専門学校だったよね、確か。でも、あの学校はダメだって、お父さんが」
 二人は、その稀有な出で立ちや、幼い頃の病弱な体質のせいか、あまり外の世界と関わることなく生きてきた。そしてこれからも――
 ゆきひは、顔を歪めて頭を振った。
「もう嫌なの。……あの人は、お父さんは、きっとこのままこの家の中で過ごした方が安全だって言うかもしれないけれど、それに学校も通信制のままの方がいいっていうかもしれないけれど……ずっとずっとずっとずーっと、このままの状態でいるなんて、私は、できない!」
 ゆきひの強い声音は、そのまま彼女自身の決意の強さを感じさせた。
 対する、ちのの反応は――
「……私は……別に、ゆきひがそっちがいいっていうなら、いいよ? でも、家を離れて学校に通うなんて、大丈夫なのかな……?」
 弱気な、ちのの言葉に、ゆきひは、むっとしたような表情になった。が、それは一瞬のことで、「じゃ、決まり!」と、ぴしゃりと言い放って、ゆきひは、ちのの両手をむんずと掴む。
「今日の夜、あの人のこと説得するんだから! ちのも協力してよ?」
「いいよ。でも、まだお父さんのこと、あの人って言うんだね」
「反抗期よ、反抗期」
 と、ゆきひが口をとがらせて言うと、ちのが苦笑した。
「私たち、離れ離れにはなれないから、きっと同じ学校じゃないとダメだろうからね」
「――え? もしかして、ちのは別の学校に進学希望?」
「ううん、特に希望なんてないの。だから、大丈夫。『ノーザン・クロス』って、絵の授業もあるんでしょ? 私は、ちょっと、そっちに興味があるかな」
「へえ、そうなんだ。興味があるって、ちのにしては珍しい」
「……そう?」
「うん。でも、ちのは絵を描いたりするのが好きだもんね」
「下手の横好きだけど」
「ぶー! ちののそういうところ、私あんまり好きじゃないーっ! もっと自信持ちなさいよー」
「ひゃっ! ゆきひの手、冷たい!」
 唐突に包み込むように頬に持ってこられた両手を、ちのはあわてて引き剥がしにかかろうとする。だが、相手はニンマリと笑って――
「ダメダメ。わるい子ちゃんは、ぴよぴよ口の刑に処す! えいえい!」
「むぐぐ、むー!」
 無情に両手で圧縮される、ちのの小さくて可愛らしい顔。そんなことされたら、彼女も黙ってはおれず。
「もうっ! そういう意地悪する子は、お仕置きだよっ」
「え。――わあっ、やめて! くすぐるのは反則っ」
 ゆきひの手を振りほどいた、ちのは両手を、ゆきひの両脇にねじこんでくすぐりにかかる。
 まるで子猫同士がじゃれ合うように絡み合う二人は、ベットに沈んで、きゃらきゃらと鈴のように笑い声を上げた。
 仲の良い双子の姉妹。第三者から見れば、誰の目にも二人はそんな風に映るだろう。
 戸籍上は、姉妹の二人。だが、それはあくまでも、『戸籍上』の話。
 いつものようにあわただしく仕事を終えて、帰宅した『戸籍上』の二人の父親は、これから待ち受ける彼女たちの提案に、目を白黒させるに違いなかった。

 アルビノ――先天性色素欠乏症の姉妹を、実家から離れた、全寮制の学校に入学させるなんて、前代未聞としか言いようがない。
 だが、それでも、歌やお芝居を愛し、絵や文字を愛する二人の希望に水を差すことなんて、本当は誰もできやしないのだ。どんな偉い政治家でも、たとえそれが『戸籍上』の父親であっても。
 粘り強いゆきひの、ちのの理路整然とした説得の言葉に、ついに父親は降参することになる。
 だから、一つ、父親は彼女たちに条件を出した(とはいえ、小さな細かい条件もあとから追加されたが)。
 ――目立たずに、しっかりと勤勉に励み、トラブルを起こさずに『ノーザン・クロス』を卒業すること。
 それが、二人に課せられた、入学の条件だった。

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この小説について

この小説は、創作ユニット「Albireo-アルビレオ-」を原作とした(一応)公式の二次創作小説です。

アルビレオの世界観を元に、しののめともの独自の解釈で少年少女たちの成長物語を綴るというコンセプトでマイペースに執筆を行っています。

「Albireo‐アルビレオ‐」公式関連サイト

*公式サイト

*「Albireo-アルビレオ-」公式Twitter

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